素敵な墓場で暮すために

筆者の北京留学・中国生活に関することを中心にしようと思っていたら書く気力がわかないまま時間が過ぎていったブログです。

中朝国境地帯を横断してみた - ④朝鮮族自治州の州都・延吉/開発が迫る国境の街・図們

※前回の続きです。

graveyard-life.hatenablog.com

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橙線が前回、緑線が今回の行程です。

 

朝鮮族自治州の州都 延吉

翌朝、7時頃にバスターミナルへ向かう。バスしか通っていない街なので、出るのも当然バスである。

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延吉へ向かうバス

今度のバスは、中朝国境地帯東部の最大都市・延吉まで一気に抜けるバスで、山道を7時間も行く限界バスである。中国の夜行列車は何度も乗ったが、これほどの長距離バスに乗るのは初めてなので、流石に不安だった。当然車内にトイレはない。

バスは市街を出ると林道の中を北へ走る。一時間弱が経過した頃、バスは公安の検査所で停止した。国境地帯なので厳しく取り締まっているのだろう。

公安が乗り込んできて、全員に身分証を呈示しろと要求する。僕がパスポートを見せると、「日本人か、お前はちょっと降りろ」と告げられ、ひとりバスから降ろされてしまった。脳内に緊張が走る。

公安から「中国でどこへ留学している」「長白には何をしに来た」「長白ではどこへ行った」など、簡単な質問をいくつか聞かれる。言葉を選んで慎重に受け答えをしたところ、問題無しとしてすぐにバスへ帰してくれた。車内でホッと一息をつく。

 

途中一回のトイレ休憩(なぜか病院)を挟んだ後、昼頃にバスは一つの飯屋の前で停車した。運転手が乗客に向かって全員降りろと告げる。

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長距離バスではご飯はどうするのだろうと思っていたが、まさかの強制昼食休憩があった。僕は幸い好き嫌いがあまりないので良かったが、口に合わなかったら地獄だな……。

完食した後トイレも済ませ、再びバスへ乗り込む。一時間ほどすると、延吉の街へ到着した。州都だけあって、中心部は結構栄えている。

宿へ向かうためバスに乗り込むと、中国領内にもかかわらず、朝鮮語が先で中国語普通話が後という珍しい自動放送が流れた。朝鮮族自治ならではの少数民族優遇政策と言えよう。

無論、朝鮮族自治州だからと言って朝鮮族ばかりが住んでいるのではなく、街の中では普通話が問題なく通用する(中国では、少数民族自治地域であっても漢族の人口の方が多いケースがままある)。

バスから降りてホテルにチェックインし、部屋で暫し休息する。これまでバス移動や歩き回るばかりで疲労が蓄積しており、正直市内観光へ出る気力がなかった。

明日には北京行きの夜行列車に乗り込んで帰路に就かなければならないが、それまでに国境地域をもう二つ見て回る予定である。そのため、この日は体力を温存しておきたかった。

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延吉の夜景

夜までホテルの中で過ごし、夕飯だけ外へ食べに出かける。美味しそうな店を検索して、スマホでDidiを呼べば一発である。

アリババやテンセントがIT技術の社会応用を牽引しているため、中国においてはスマートフォン一つでできる事が非常に多く、この分野では日本よりも相当先進的である。

一方、社会への影響が論じられるよりサービスのスタートの方が先なので、何か問題が起きてからコロコロ制度が変わっていくのも中国の特徴と言えよう。一長一短である。

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そんなことを考えながら美味しいビビンパを堪能し、帰路も同じようにDidiを呼んでホテルへ戻った。

 

開発が迫る国境の街 図們

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早朝の延吉駅

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翌朝、延吉駅から早朝6時前の列車に乗り込み、図們へ向かった。早朝かつ末端区間なので、車内はガラガラ。

延吉から図們までは高速鉄道もあったが、中国の高速鉄道にありがちな問題として「市街地から駅がクソ遠い」に図們が該当するため、在来線のほうが好都合だった。

乗車時間一時間弱で図們駅へ到着した後、駅を出て国境の豆満江を目指した。

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豆満江に面する国境記念碑

豆満江付近に到着すると、観光タクシーのおっさんおばさんがあちこちに立っていて、ヨソモノ感丸出しの私を鬼のように勧誘してくる。これまでの国境にはなかったことだ。

一人のおっさんが「写真を撮ってやる」「もっといい場所があるが」「車でしか行けない」「俺の車に乗れ、一日たった50元だぞ」としつこく500mはついてくるので、国境を示す記念碑のところで写真撮影だけしてもらい、それから勧誘を振り払うように早足で国境の橋へ向かった。

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建設中の新しい国境橋

図們と対岸の南陽市を結ぶ国境の道路橋では、従来の橋の傍らに新規でもう一回り大きな橋を作っている様子が見えた。また、口岸の周辺も長白と同様建設中の建物が目立つ。

やはり、図們も北朝鮮の経済開放を見越して開発が進められているのだろうか。

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対岸の南陽へ渡る鉄道橋

さらに歩いていくと、立派な鉄道橋を間近で見ることもできた。鉄道橋の両端では双方の兵士が直立不動で国境の線路を守っている。

このあたりでそろそろ国境の向こう側の街並みを見るのにも飽きが来始めていたのと、次の目的地へ向かう列車までの時間がなかったことから、図們は一時間半ほどの散策で切り上げ、タクシーを捕まえて高速鉄道の図們北駅へ向かった。

高速鉄道駅までの道は整備が終わっておらず、荒野のような未舗装道路だった。

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~次回に続きます~

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